統合失調症
人間の脳の働きは、脳に張り巡らされた神経のネットワークが司っています。目や耳から入った情報の処理、思考、感情などは、すべてこの神経ネットワークの働きによって営まれています。そうした働きをうまくまとめることができなくなっている状態、つまり「統合」が「失調」している状態が、統合失調症の本体です。
統合失調症では、幻覚や幻聴、妄想、興奮などの激しい症状のほかに、意欲の低下や感情の起伏の喪失、ひきこもりなど、様々な精神症状を呈します。
若い人に多く、患者さんの約8割は、15~30歳の間に発症すると言われます。
統合失調症の症状
統合失調症の代表的な症状には「陽性症状」と「陰性症状」、および「認知機能障害」があります。
陽性症状
現実には無いものをあるように感じたり、存在しない声が聞こえたり、あり得ないことを信じ込んだりする症状です。つまり、幻覚や幻聴、妄想などです。
陰性症状
陽性症状とは反対に、陰性症状は、あるはずのものが低下している状態です。
喜ぶ、怒る、哀しむなどの感情が乏しくなり、表情の変化も少なくなります。また、意欲が減退し、何事に対しても関心が薄くなり、身だしなみにも無頓着になります。家族や友人を含め、他者とのコミュニケーションも避けるようになります。部屋に引きこもる人もいます。
認知機能障害
認知機能というのは、記憶したり、注意を集中させたり、計画を立てたり、判断したりする能力のことです。統合失調症の患者さんの場合、この認知機能が低下します。
こんな症状はありませんか
- 誰かが自分の悪口を言っている
- 奇妙なものが見える
- 体に妙な感覚がある
- 誰かに見張られていると思う
- 自分の行動や考えが誰かに支配されていると思う
- 喜怒哀楽が乏しくなる
- 意欲や気力が低下し、興味や関心を示さなくなる
- 言葉数が極端に少なくなる
- 他者とのかかわり合いを避けるようになる
- 注意力がひどく散漫になる
- 作業能率が著しく低下する など
統合失調症の治療
統合失調症の治療の柱は、薬物療法と精神科リハビリテーションです。
薬物療法
薬物療法の中心になるのが抗精神病薬(統合失調症などの精神病の治療薬)で、陽性症状にかなり効果的です。そのほかにも症状に応じて、睡眠薬や抗不安薬、気分安定薬などを使うことがあります。
精神科リハビリテーション
陰性症状や認知機能障害を大幅に改善する薬がまだ開発されていないこともあり、薬物療法と精神科リハビリテーションは、統合失調症における治療の二本柱になっています。精神科リハビリテーションには、病気の知識やストレス対処法を学ぶ心理教育、人間関係を円滑にする練習を行うSST(社会生活技能訓練)、記憶力や集中力などをつけるための認知機能リハビリテーションなど、様々な方法が知られています。